野村将揮 | Philosophical Insights − 哲学と政策と経営のあいだ −

哲学研究者で元経産官僚で医療AIベンチャーCXOがハーバードで考えた哲学的洞察の走り書き

意味への問いと自己否定

こんなことに何の意味があるのか、と問うことを続けていくと、否応なしに自分という存在の意義さえも否定せざるを得なくなってくる。この問いの行き着く先、つまりは、得心と諦念とを以て意味の追求をようやく終えられる場所にこそ、思想信条がある。自己否定の蓄積の中においてのみ存在論的了解の支柱が樹立されていくのであり、この支柱の強靭さが、世に言う有意義な人生を支えていく。その意義は意味への問いへの答たり得ないが、問いそのものを霧消させてくれるものにほかならない。

 

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