野村将揮 | Philosophical Insights − 哲学と政策と経営のあいだ −

哲学研究者で元経産官僚で医療AIベンチャーCXOがハーバードで考えた哲学的洞察の走り書き

人生への責任

自分の人生への責任を全て背負って生きて死んでいくほかないという残酷極まりない当然の事実を覚悟を以て受容した人間は、たとえ表面的には柔和でも、奥底から鬼気迫るものが滲み出て来る。無論、元来的に個人の生は独立して存立しているものではないので、他人の生ひいては人間社会をも背負う形で自分の人生のあり方を規定することも当然にあり得る。界隈の真っ当な救命救急医と教育者は、やはりこの点が抜きん出ている。自分のあらゆる振る舞いが目の前の人間の人生を左右するという矜持と恐怖を相手方に悟られないように自分の中で発酵させていく姿勢は手放しに称賛せざるを得ない。こういった人たちに触れると自分の背筋も伸びる。二流が一流を自称しても三流に称賛されるだけでしかない中、究極的には、「お前の人生、本当にそんなものでいいのか?」という問いを自分に向け続けられるかどうかでしかない。この帰結が美意識であり、価値観であり、生き様にほかならない。

 

------------

本稿の著作権は著者に帰属します。著者の許諾のない複製・転載・引用等を禁止するとともに、これらに対しては、適宜、法令に則り対応します。どうかご留意ください。